みずほ銀行と富士通が金融EDIで請求書発行から領収書受領までを自動化 ――流通システム標準普及推進協議会 2017年度通常総会――

2017.6.02

富士通株式会社
財務経理本部
財務部 営業財務部
部長

浜 俊明 氏

株式会社みずほ銀行
グローバルプロダクツ業務部
制度・基盤チーム 兼 資産管理企画チーム
次長

藤本 壮師 氏

記事概要イメージ画像

 BtoBの企業間取引における代金請求は依然として「紙」の請求書を使っているケースが多く、請求書の作成から、支払、入金消込の各ライフサイクルにおいて、紙の代金、印刷費、郵送費、倉庫保管費などのコストが発生している。そこで、みずほ銀行と富士通は、これらの取引フローを電子化するパイロットシステムを開発し、実証実験を実施して一定の効果を挙げている。17年5月11日に明治記念館(東京・港区)にて開催された17年度の流通システム標準普及推進協議会の年度総会では、みずほ銀行の藤本壮師氏と富士通の浜俊明氏が登壇し、プロジェクトの概要や導入効果、官民の動向などについて講演した。

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「電子請求書発行・決済(EIPP)」と「取引書類記録」のためのインフラを構築

 最初に富士通の浜氏が、「請求支払業務電子化・売掛金消込自動化に向けた実証実験と検証」について解説した。

 

 同社は、BtoB取引における「請求発行~決済・消し込み~領収書受領」までにおいて、①取引フロー、②入金確認、③取引書類保管の3つに課題を抱えていた。①の取引フローでは、取引関係書類を印刷・押印したうえで相手に郵送するコストまたは持参するための人件費が発生する。②の入金確認でも決済には振込人、金額、日付程度の情報に限られるため情報が少ない。さらに決済情報と請求情報も電子的に紐付いていないため、人力での付け合わせが必要で、確認のコストも膨大となる。③の取引書類でも、e文書法で電子化はされているものの紙のスキャンが発生し、さらに税務上の都合で一定期間は保管・管理するためにコスト負担がかかる。

 

 これらの課題の解決策を模索した同社は、サプライヤー・バイヤー双方の電子化解決策として、「電子請求書発行・決済(EIPP)」と「取引書類記録」のためのインフラが必要と考え、みずほ銀行と共同でパイロットシステムを構築した。浜氏は「これにより、業務の最適化と人件費・諸経費・郵送料・書類保管コストの削減、入力ミスの削減、請求書の紛失などの内部統制高度化、決算の早期化、資金管理の向上が期待されました」と語る。

 

 パイロットシステムのコンセプトは商流EDIと金融EDIの「架け橋」となることであり、具体的には①商流EDIと金融機関を特定することなく接続可能とすること、②社内システムとの接続を想定してさまざまなデータのアップロード・ダウンロードを可能とすること、③請求書、支払案内、領収書などをペーパレス化することの3つが挙げられた。これらの条件に対する解決策が「EIPP機能」と「取引書類記録」の2つだ。

 

「金融EDIとつなぐ商用EDIはさまざま存在しますが、資金決済までのフローはほぼ共通化しています。そのため、最小の投資で最大の効果が生まれると考えました。具体的にはEDI、ERP、銀行の3つをすべてマルチで対応することを目指しました」(浜氏)

 

 みずほ銀行と富士通が構築したパイロットシステムは「InvoiS3」と名付け、実証実験をおこなった。システムでは、サプライヤーとバイヤーをインターネットで接続し、請求から支払依頼、入金消込までを一気通貫させている。合わせて、請求書を発行しない支払案内による取引にも対応させた。また、バイヤーの支払でなく、購買が検収したものを支払通知または請求書をバイヤーの発信で消込することも想定して、両方のデータをつなぐことで金融EDIに接続して効率化をはかっている。

 

 

電子化により郵送コスト、入力工数、管理コストなどが大幅に削減

 実証実験の結果、請求書発行のフローは支払が一元化され、バイヤーは郵送の手間やERPへの入力工数、保管コストが軽減された。サプライヤー側でも郵送コスト、発送工数、紛失リスク、保管コストの削減が実現している。支払発行案内でもサプライヤー側に受領情報が電子データで渡るため処理は早期化された。支払依頼作成ではFBデータの作成、銀行別FBデータの作成などにより、バイヤー側でチェック工数の削減、振込コストの削減、振込エラーの防止などに効果が現れている。入金消込についても自動化によって内容確認の手間がなくなり、サプライヤーとバイヤーともに問合わせ対応工数の削減につながった。領収書受領においてもバイヤー側では依頼工数の削減、サプライヤー側でも印刷コストや作成工数の削減が実現している。

 

 「具体的な削減効果を見ると、富士通本社では請求書の印刷・封入・郵送にかかる人件費が従来比で99.2%削減されたほか、消込における問合わせ対応などもなくなり、電子化すべての結果として大幅なコスト削減が実現しました」(浜氏)

 

 導入効果はコスト削減以外でも大きく、電子化は社内の業務フローの見直しのきっかけになった。情報が一元化されたことで請求書の発行を財務部でなく各営業部でもきるようになり、今まで見えていなかった情報も可視化され、請求書の受領も分散化されている。これによってグループ会社の業務の一元化や、アウトソーシングの活用による間接部門のコスト削減の効果も期待できる。さらに物理的な書類がなくなることで勤務場所の制約がなくなり、働き方改革にも貢献する可能性が高い。

 

 富士通では同社以外の企業にもヒアリングを実施した結果、製造業、シンクタンクなどで相当の効果が出るという声が寄せられており、期待度は高まっているという。最後に浜氏は「流通に比べて電子化が遅れていた製造系の業界にもようやくEDIが浸透し始めましたので、今後も業務の効率化を進めていきます」と語って講演を終えた。

 

 

18年には銀行と流通をつなぐ金融EDIシステムが稼働

 続いて、みずほ銀行の藤本氏が「EDIを取り巻く官民動向」を解説した。みずほ銀行と富士通が商流EDIと金融EDIをつなぐパイロットシステム「InvoiS3」を開発したきっかけは、14年度の流通業界と金融機関との共同システム実験だったという。当時の共同実験は、ASPサービスを介して銀行システムと流通システムの間をつないで総合振込情報や振込通知情報をやり取りし、業務の負荷を下げるというものだった。「ところがこの場合、あくまでも支払側が自ら手間をかけて商流情報を付けないと送金ができないという欠点を抱えていました。しかも請求情報は紙として残ってしまっていたため、請求情報を電子化してEDIで共有化する目的でInvoiS3を開発しました」と藤本氏は語る。

 

 15年度になると金融庁に決済高度化のワーキンググループが立ち上がり、企業間の国内送金指図で使う電文方式を20年までに固定長からXMLに移行することが提言された。その後16年の「日本再興戦略2016」でも企業間の銀行伝送電文を20年までに国際標準のXMLに移行し、送信電文に商流情報の添付を可能とする金融EDIの実現が求められた。その結果として、従来のASPサービスに変わる新しい金融EDIシステムとして「金融・ITネットワークシステム」が構築され、18年頃に稼働を開始することが決まっている。16年度には全銀協で金融EDIの新システムの開発決定し、経産省は金融EDIに記載する商流情報の標準化に取り組むなど着々と前進している。

 

 

金融EDIが発展していくためには「互恵の関係」が重要

 このようにシステム的な環境は整いつつあるが、中小企業や上流工程まで金融EDIや商流EDIが浸透していないのが現状だ。そこで、16年度は中小企業との連携に課題を定め、受発注の実証実験を17年度いっぱいで実施している。実証実験は期限が来たら終わるのが一般的だが、今回の実験はその後の商用までを前提とした。藤本氏は「流通業界から金融EDIへの期待は非常に高く、以前から待望論がありました。その念願が叶って18年からは実現する予定ですのでぜひ活用してください。InvoiS3は、リベートの請求は紙でのやり取りが続いている流通業界にも役立ちます」と語る。

 

 また、金融EDIが発展していくためには「互恵の関係」が重要になるという。支払と受取を比較した場合、支払は消込情報を付加しなければ受取にメリットが生まれない。大企業と中小企業の対比では、大量の振込があるとメリットは受取側に大きくなり、中小の支払側は作業負担が増えることが想定される。一方で中小の支払側は入金消込が少ないため金融EDIにメリットを感じにくく、受取側の要請がなければ金融EDI化は消極的になりがちだ。産業界と銀行界の対比では、産業界に比べて銀行界のほうがメリットを実感しづらい。「このように各当事者がEDIによる電子交換で直接的でも間接的でもメリットが得られるようにしていくことが重要です」と藤本氏。

 

 みずほ銀行が金融EDIに関与することについては、銀行の将来的なビジネスにつなげることを念頭に置いたうえで、企業に対する運転資金の向上と信頼度の向上に目的があるという。とはいえ、最も大きいのは社会的な信用が大切な企業間の請求プラットフォームを、銀行が担うことだ。藤本氏は「企業間決済に近いところに銀行があることで安心して利用いただけると思います。銀行業界が取り組んだ金融EDIはようやく船出を迎えますので、今度は産業界の出番です。金融EDIの活用に向けて支払側の企業や大企業など、影響力を持っている企業は、互恵の精神で先頭に立って活用に向けて踏み出してください」と呼びかけて講演を締めくくった。

 

 

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