2014年度 流通BMS普及推進セミナー -新たな局面を迎えた標準EDI-

2015.3.17

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 流通BMSの導入は順調に進んでいるものの、大手のGMSやスーパーマーケットが中心で、中小の小売店までは裾野が広がっていないのが現実だ。また、日用品や加工食品は対応していても、生鮮食料品まで手が回らない小売事業者も多い。さらに近年は、2020年から電話回線が廃止されるという問題がクローズアップされ、JCA手順からの早期移行という新たな課題も浮上している。
 そこで、流通BMS協議会では2015年2月、大阪、名古屋、東京の3都市において流通BMSの普及推進セミナーを開催。今年度承認されたチェンジリクエストの報告、小売業の導入事例、NTTの回線網移行に関する講演が行われた。2月27日に東京のベルサール半蔵門で開催されたセミナーには、定員200名に対して250名以上の申し込みがあり、関心の高さを伺わせた(以下は、東京開催の講演を元に作成)

地方と中小企業への導入拡大へ -流通BMS協議会の活動報告-

 プログラムの最初は、流通BMS協議会の坂本尚登事務局長が登壇。14年度の流通BMS協議会の活動報告を行った。14年度、協議会では新たな標準化に取り組み、卸団体から提出されていたチェンジリクエストを承認した。また、正会員として名を連ねる、流通4団体、日本チェーンドラッグストア協会、卸研、生鮮取引電子推進協議会、日本ロジスティクスシステム協会と連携した活動を通して普及活動を進めてきた。さらに、従来の流通BMS「入門講座」に加え、「導入講座」を新たに開始している。坂本氏は「導入講座は、セミナー会場で開催するだけでなく、講座内容の動画を作成し、eラーニング形式で全国どこからでも見られるようにしていく」と語った。

 

 また、「中小企業への普及が進まなければ本当の成果にはならない」という強い危機感から、今年度の重点活動テーマとして「地方への的確な情報提供」と「中小企業サポート強化」を掲げ、施策を具体化していくことを明らかにしている。最後に坂本氏は最新の流通BMSの普及状況を説明し、「JCA手順の廃止が始まる20年に向けて、流通BMSの普及を加速させていくために、参加企業のさらなる支援をお願いします」と訴えた。

 

 

卸研からのチェンジリクエストがついに採用 -出荷開始型メッセージと納品明細書の標準化について-

 続いて、一般社団法人日本加工食品卸協会と国分株式会社で情報システム部長を務める高波圭介氏が、 14年度のチェンジリクエストで認められた「出荷開始型メッセージ」と「納品明細書」の標準化について説明した。

 

 卸売業の情報化を研究する卸研では、12年から「流通BMSの標準運用」をテーマに研究に取り組んでいる。その中で、参加企業にアンケート調査を実施したところ、オフライン受注を行っている企業は全体の30%、小売業側に出荷メッセージを返している企業は88%あることがわかった。高波氏は「流通BMSは小売業の発注データから始まるのが標準だが、現実的には特売や追加発注などで電話やFAXによるオフライン発注は残り、小売業からは出荷メッセージの返信が要望される。また、卸売業者も債権管理の都合上から、オフライン受注分の受領メッセージは受け取りたい。こうした現実的な問題があり、出荷開始型メッセージの標準化が必要だった」と説明した。

 

 伝票・納品明細書についても12年に実施したアンケート調査から、45%の企業が伝票・納品明細書を採用し、小売業ごとに納品伝票の仕様が異なることが明らかになっている。流通BMSはペーパレスが目標だが、小売業では店舗での検品用または仕入計上の控えとして、卸売業でも受領証憑として納品伝票が必要だ。そのために納品明細書の記載項目とレイアウトを標準化したいという要望があったという。

 

 これらをまとめて、卸研では13年12月に流通BMS協議会にチェンジリクエストを提出。14年10月に承認され、同年12月に「出荷開始型モデルの出荷メッセージ」と「納品明細書」の標準化がガイドラインに追加された。ガイドラインのポイントについて高波氏は「出荷開始型モデルの出荷メッセージは固定値とし、それ以外の項目は使用しないことにした。納品明細書については、印字項目とレイアウトを定義した」と語った。

 

 今後の流通BMSの普及に向けては、卸研で作成した「導入ガイドブック」による社内啓蒙を行っていく方針だ。また、卸研および日食協情報システム研究会で行った最新の導入状況調査をもとに、新たな課題を掘り起こしていく。最後に高波氏は「流通BMSの普及に向けて、卸側から仕掛けていく意識で活動を進めていることをご理解いただければ思います」と訴えて講演を終えた。

 

 

生鮮EDIの運用を青果、精肉、鮮魚の全部門で開始 -小売業の流通BMS事例-

 続いて、小売事業者の導入事例として、東京、神奈川、千葉で21店舗のスーパーマーケットを運営する株式会社トップ 専務取締役の高橋直樹氏が登壇し、同社の取り組みを紹介した。

 

 年商205億円のトップは、中堅スーパーの共同出資で設立されたCGCグループに加盟し、システムもCGCグループの共通情報基盤「みんなのCGCシステム」を採用して流通BMSへの対応を進めている。まず同社が取り組んだのが「自動売価変更」だ。グロサリー/日配では日本特有の慣習のために、普通仕入と特売仕入で売価に差異があり、正確な粗利が把握できないのが悩みだった。この問題を解決するために同社は12年9月に「自動売価変更システム」を導入。特売で入荷した商品を検収時点で普通売価に自動変更(値上)できるようにしたり、POS販売時点で販売売価に自動変更(値下)できるようにしたりした。「その結果、高い精度で粗利の把握が可能になり、競合対策や在庫高のコントロールにつながっている」と語った

 

 さらに、第2ステップでは生鮮EDIの導入を10年7月から13年11月にかけて実施し、青果、精肉、鮮魚の全部門で運用を開始している。この取り組みのきっかけは生鮮特有の課題を解決するためだった。高橋氏は「生鮮食品は、収穫量や漁獲量で相場が決まり、価格は直前までわからない。また、価格確定が遅く、伝票が遅れて届く場合もある。さらに同じ品目でも発注後に産地が変わることも多い。そのため、システムにはリアルタイム性、可変性、柔軟性を求めていた」と説明する。

 

 この問題を解決するために、生鮮EDIシステムでは生鮮標準コードを採用。さらにWeb画面のやり取りで受発注ができるように作業を簡素化し、生鮮固有のクレーム情報も取引先と共有できるようにした。生鮮EDIシステムの導入による改善効果は大きく現れ、「発注コストは年間140万円、入力伝票は月間3万枚、検収作業にかかる人件費は年間550万円の削減になった。さらに締めの5日後にしか確認できなかった正確な粗利が、今では毎週月曜に前週の粗利がわかるようになっている」と述べている。

 

 第3ステップでは、品切れの削減、適正在庫の実現、適正棚割の確立、人時生産性向上の4つを目指してグロサリーの自動発注に取り組み、14年4月で全店舗へのシステム導入を終えている。導入のポイントについて高橋氏は「自動発注は在庫を正確に把握しないと動かない。そのためにも標準化された流通BMSで素早く仕入情報を捉えることが重要」と語った。自動発注システムの導入による改善効果としては、「当初の期待を上回る、月間3,000万円分の在庫削減につながり、資金繰りが楽になった」と高橋氏。また、バックルームの在庫減により作業性が向上し、棚在庫の削減で先入れ、先出し時間が短縮された。

 

 こうした取り組みが功を奏し、同社のEOS化率は大幅に向上。現在、生鮮のEOS化率は93.7%に達している。また、EDI化率は生鮮が96%、グロサリー/日配で99%と高い実績を確保している。最後に高橋氏は「今後も卸売業と協力しながら、流通BMSを含め、広い意味での標準化を進めていきたい」と語った。

 

 

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