流通業界がネットスーパーに力を入れている。インターネット通販市場が拡大を続ける中、大手だけではなく中小のスーパーのネットスーパー参入に対する意欲も高まるばかりだ。ネットスーパー市場が加熱している背景とその将来について探ってみた。

大手スーパー各社がネットスーパーに対する積極的な姿勢を見せている。全店展開を表明しているイトーヨーカ堂をはじめ、イオン、ダイエーなども対応店舗を増やし、これまでもネットスーパーに力を入れてきた西友もさらなる対応店舗の拡大に乗りだした。さらに、リアル店舗を出店するより低コストで商圏を拡大できることから、地方の中小スーパーでもネットスーパーへの参入意欲が高まっている。
インターネットが急速に普及し始めた2000年頃にも、ネットスーパーへの参入がブームになったことがある。しかし、インターネットの通信環境がまだ脆弱だったり、スーパーの主要顧客でもある主婦層に対するパソコン普及率が低かったこともあって、ネットスーパーに参入した各社は適正な収益が確保できず、当時は撤退が相次いだ。
しかし、現在では、ブロードバンドによる高速インターネット通信が標準となりつつあり、オフィスだけでなく家庭にもパソコンが普及したことで、誰もが手軽にインターネットを利用できるようになった。インターネットが社会的インフラとして整備されるのに伴い、インターネット通販の市場規模も拡大を続けてきた。このような背景もあり、スーパーを含む様々な流通業態のリアル店舗の売り上げが伸び悩みを続ける中、ネットスーパーへの参入ラッシュは起こるべくして起こった現象だと言える。
リアル店舗がネットスーパーに参入することで、ライバル店の存在などによってこれまで顧客を開拓できなかった商圏の新規顧客を獲得することができるようになる。さらに「雨天でも自宅に居ながら買い物ができる」「飲料などの重い荷物が自宅まで届く」しかも「即日配達してくれる」など既存顧客に対するサービスも向上する。これが、各社がネットスーパー参入を急ぐ最大の理由だ。
大手スーパーのネットスーパーがしのぎを削る首都圏では、すでにネットスーパー間の競争も激化しつつあるようだ。実際に商品を選別することのできないネットスーパーにおいて、最終的に消費者がどの店を選ぶかの基準は、その店の「商品力」と「信頼性」になると考えられる。例えば、「魚介類の美味しい店」として定評のあるスーパーがネットスーパーを展開すれば、これまでは店から離れていたため普段は近所のスーパーで買い物をしていた消費者も立地を気にせずにネットスーパーで買い物をすることができる。品揃えに自信のある中小スーパーがネットスーパーに参入すれば、大手スーパーに対抗することも十分可能なのだ。
ネットスーパー市場の将来については「まだまだ拡大する」という見方が関係者の間では大勢を占めている。ネットスーパーでは雨の日にオーダーが一気に増える傾向がある。これは、ネットスーパーの主要な利用者である20代から40代の主婦が雨の日に買い物に出かけることを敬遠するからだ。即日配達をしてくれるネットスーパーを利用すれば、雨の日にわざわざ買い物に出かけて、ストレスを感じながら荷物を持ち帰る必要はない。このような経験を通じてネットスーパーの便利さを体感した消費者が増加すれば、小さな子供を抱えていて外出もままならない主婦や、共働きの女性などはネットスーパーを積極的に利用するようになるだろう。
また、少子高齢化が進む影響もあり、今後は買い物で重い荷物を持ち運ぶことの困難な高齢者のネットスーパー利用も増えると予想される。これまで高齢者のネットスーパー利用が進まない背景として、パソコンの操作が苦手であることが一番のネックとなっていたが、これから定年退職する高齢者は会社でパソコンを操作した経験のある場合も多く、ネットスーパーの利用に抵抗を感じない人も増えるはずだ。
ネットスーパーは商圏を一気に拡大して新規顧客を獲得する有益なチャンネルとして機能させることができる。さらには、既存顧客を囲い込むためのサービスとしても有効だ。もちろん、ネットスーパーを成功させるためには、最適なシステムの選定や、導入から運用までを無理なく推進するための環境整備も欠かせない。ネットスーパーの担当者がクリアしなければならない項目は多い。しかし、将来の成長に対する投資として、ネットスーパーへの参入が欠かせないと考える点については衆目の一致するところだろう。
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