【成城石井】差別化を実現し新たな価値創造へ

2008.12.01

株式会社 成城石井 社長

大久保恒夫 氏

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 いま流通業界では、成熟した市場で激化する競争を勝ち抜くために、多様化する消費者ニーズをとらえ、真の顧客満足につなげる業務改革が進行。それを支え、経営の効率化を図るIT(情報技術)活用が不可欠になっている。需要予測や在庫管理システムの高度化、最新販促ツールや進化する電子マネー対応、また業界標準データ形式「流通ビジネスメッセージ標準(流通BMS)」の導入など、流通・サービス業のIT化はどうあるべきなのか。食品スーパーとしていち早く流通BMSの導入を推進する成城石井社長の大久保恒夫氏に情報化投資戦略を聞いた。

 おおくぼ・つねお/1979年イトーヨーカ堂入社。81年、経営トップ直結の「業務改革」の主要メンバーとして同社の構造改革に取り組んだ経験を生かし、同社退社後もコンサルタント、流通経済研究所研究員として活躍。90年、リテイルサイエンスを設立。ファーストリテイリング、良品計画などの経営改革を担当し、2003年から06年、ドラッグイレブンの代表取締役を務める。07年から現職。

価格以外の顧客満足追求

―経営環境が激変している。
 大久保 現在の流通・サービス業全体の経営環境を考えるうえで影響が大きいのは少子高齢化だ。マーケットの縮小傾向にどう立ち向かっていくのかが問われている。今後は売り場面積を増やしても売り上げの伸びは期待できない。ディスカウント志向の中堅以下の企業は効率性が落ちることで利益が圧迫され、規模・売り上げの上位企業が有利になる傾向にある。
今後は、スケールメリットで体力勝負のディスカウント志向と、店舗や品ぞろえの独自性をアピールする差別化志向に二極化していくだろう。当社は後者。お客様のニーズに対応して付加価値を提供することで生き残ろうとしている。幸い日本の消費者は価格以外のニーズが強く、差別化志向に応える製品・サービスを提案できる余地は大きい。例えば日本の小売市場をみると、コンビニがほかの業態をリードしている。これは日本の消費者が、便利で清潔、新しい製品や独自の製品が買えることに大きな価値を見いだしているということ。今後はコンビニ以外の業態でも、価格以外の顧客満足を追求してそれを購入してもらえるかどうかが重要な鍵になる。

 

― そのために必要な情報化投資とは。
 大久保 当社は食品スーパーとしては先行して、流通BMSの導入を決めた。POS(販売時点情報管理)など売り場づくりを目的とした情報システムとは異なり、受発注と経営全体の効率化を図るのが大きな目的だ。受発注データの標準化により、卸売業者やメーカーなどと、相互に商品の受発注や決済の情報を電子的にやりとりできるほか、自社内データから外部向けデータを瞬時に作り出力できるため、一貫・連動した経営システムの構築が図れる。情報システム化を進めることで業務のスピードを上げ、さらに質の高い商品を提供していくことで粗利率を高める。その結果、経営資源を接客やサービス、仕入れなどに回し、より価値ある商品を価値ある売り方で提供していく方針だ。情報システムの構築から、「新たな価値」の追求への流れをつくることが経営改革。これは社員のモチベーション向上にもつながると考えている。

 

 本来、小売業は創造性が生かせる職場。アイデアを仕入れや販売につなげれば、結果はすぐに目に見えて出てくる。工夫のある売り場づくり、実績を検証した中での改良を重ねることで小売業の仕事は一層おもしろく、意義深いものになる。情報化投資はそのための手段だ。