2018年1月31日の締め切り迫る。最大1,000万円の補助金を活用して流通BMSへの移行を

2017.5.26

独立行政法人 中小企業基盤整備機構
経営支援部
消費税軽減税率対策費補助金統括室
参事

前田 和彦 氏

副参事

清水 敬広 氏

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 いよいよ2019年10月に迫った消費税率10%への引き上げ。それと同時に実施されるのが、飲食料品を対象にした軽減税率制度だ。制度への円滑な移行を支援するため、経済産業省中小企業庁では複数税率対応のレジの購入費用や、受発注システムの改修費用の一部を補助する「軽減税率対策補助金」を設けた。
 補助金制度は流通BMSへの切り替えにも対応しているため、まだJCA手順で受発注を行っている事業者は、これを機に流通BMSに移行して軽減税率対策を図ることは可能だ。しかし、補助金の申請受付期限は18年1月31日までと、残された期間はわずかしかない。そこで、補助金制度を活用するための手順と留意点について、軽減税率対策補助金事務局(以下「事務局」)を担う独立行政法人中小企業基盤整備機構の担当者に聞いた。

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従来型EDIを利用している事業者は、流通BMSに切り替える絶好機

 19年10月に消費税増税が実施されると、飲食料品を扱う事業者は軽減税率制度への対応が必要になり、標準税率(10%)と軽減税率(8%)の商品を区分して管理することになる。業務面では「仕入における発注・受注」「販売時における請求書や領収書の発行」「売上・仕入の記帳」「税額計算」など、日々の様々なプロセスにおいて対応が生じることになる。それと合わせて複数税率に対応した設備を新たに購入したり、既存の設備を改修したりする必要も生じてくる。具体的には新たな記載ルールに基づく請求書・領収書を発行できるレジの購入や受発注システムの改修などが挙げられる。

 

 こうした状況を踏まえて国では軽減税率制度に向けた準備を円滑に進めるべく「軽減税率対策補助金」を設け、事務局において16年4月1日から申請を受け付けている。「特に受発注システムにおいては、マスターへの税率項目の追加や、取引先とデータを授受するためのフォーマット変換等のシステム改修が必要です。これに対応できないと取引先との受発注業務に支障をきたし、取引ができなくなる可能性も生じるため、軽減税率制度の実施までには対応しておく必要があります」と前田氏は指摘する。

 

 流通事業者にとって最大のポイントは、この軽減税率対策補助金を使って流通BMSなどに切り替えができることだ。実際に補助金の申請の中には、JCA手順等の従来型EDIから流通BMSに切り替える事例も散見されているという。また、今まで電話やFAXで受発注業務をおこなっていた事業者が取引先からの要請を受けてEDIを導入する事例もあり、この補助金が軽減税率対策の推進とともに中小企業の生産性向上にも寄与しているようだ。

 

「流通BMSは大企業で進みつつある一方で、中小企業では導入が進んでいないと聞いています。この補助金は中小企業を対象としたものですので、中小企業に対する軽減税率対策と同時に流通BMSの普及の一助にしていただければと思います。一方で、流通業界においてはNTT東西のISDNサービスの終了など軽減税率対策以外の課題も抱えていると聞いています。このような事業環境を考えるとJCA手順などの従来型EDIを利用している事業者についてはまさに今が流通BMSに切り替える絶好機だと考えられますので、軽減税率対策補助金の活用をぜひ検討してください」(前田氏)

 

 

飲食料品を扱っている中小企業・小規模事業者が補助対象

 軽減税率対策補助金を細かく見ると、この制度には「複数税率対応レジの導入」と「受発注システムの改修・入替」の2種類があるが、今回は後者の「受発注システムの改修・入替」のうちITベンダー等に外注してシステム改修等を行うケース(「B-1型」という)に絞って説明する。まずこの補助金は、以下3つの要件を満たしていることが申請の条件だ。

 

①対象企業は、中小企業・小規模事業者

中小企業の要件は、業種ごとに資本金の額・従業員数で定められている。小売業の場合、資本金が5,000万以下または従業員数50名以下、卸売業の場合、資本金が1億円以下または従業員数100名以下が中小企業に該当し、補助対象となる。ただし、大企業の子会社など一定の条件に該当する場合は対象外だ。

②EDI/EOS等の電子的受発注システムを利用していること

原則はEDI等を利用して取引先と受発注をしている事業者が補助対象となる。ただし、現在はEDI/EOSを利用していないものの、取引先の要請等により、新規に導入して対応する必要がある場合には特例として補助対象となる。

③飲食料品を扱っている事業者

 

 また、補助金の対象となる経費は、ITベンダーにシステム改修を外注する場合の費用だ。具体的にはSEの作業人件費やパッケージソフトの購入費、操作指導の費用等が相当する。補助率は、補助対象となる費用の2/3までだが、上限額も以下のように決まっている。

①    発注システムの改修は上限額1,000万円

②    受注システムの改修は上限額150万円

③    発注・受注の両方の改修は上限額1,000万円

 

 

ITベンダーによる代理申請で中小企業の事務負担を軽減

 補助金の申請は、受発注システムの改修に限れば、システム改修を請け負ったITベンダー(指定事業者)がおこなうことになる(「代理申請」という)。受発注システムの改修は専門的な内容となるため、小売業や卸売業の中小事業者が申請書を作成するのが困難だからだ。代理申請をおこなうITベンダーは事前に「指定事業者」の登録手続きをおこなうこととなる。

 

 補助金の申請手続きは2回必要。1回目はシステム改修の契約や作業に着手する前の「交付申請」、2回目は受発注システムの改修がすべて終わり、ITベンダーへの代金支払いを終えた後の「事業完了報告」が必要となるが、事業完了報告の受付締切が18年1月31日までと残された期間は少ないため早めの対応が必要だ。

 

「補助対象要件」と「スケジュール」をチェック

 補助金を申請する上での注意点は、対象となるための要件を確認することだ。対象者は現在EDIを使って事業者間で飲食料品の受発注取引をおこなっていることが前提となっている。「誤解を受けやすいのは、発注書などをExcelファイルで作成し、メールで送受信している小売事業者のケースです。この場合、受発注システムを利用していることにはなりませんので、補助金の対象とはなりません。電話やFAXでの受発注の場合も同様です」と清水氏は説明する。また、ECサイトで消費者と取引している場合も対象外だ。「補助金の対象は事業者間での取引(BtoB)であり、消費者との直接取引(BtoC)のケースは対象になりませんのでご注意ください」と清水氏は語る。

 

 申請の受付期限にも注意が必要だ。上記で説明したとおり、申請受付期間中に改修作業を完了し、代理申請を行うITベンダーが「事業完了報告書」を提出することが必要となる。システム改修は通常、事前の打ち合わせから、設計、プログラム構築などに一定の時間を要するが、そこに取引先との調整やテスト、本番環境の構築などの行程が加わるとさらに時間がかかることになる。さらに補助金を活用する場合には、申請の受付から交付決定通知まで最短でも1カ月程の時間を要することになる。

 

「こうした事情も踏まえて余裕を持った改修スケジュールを検討することをおすすめします」と前田氏は強調する。

 

 補助金の申請受付の開始から1年強が経ったところだが、受発注システムの改修に関わる申請の件数は、複数税率対応レジの購入と比べて多くないという。「補助金の情報が全国の小売や卸売事業者まで行き渡っていないという側面もあると思いますが、軽減税率対策として受発注システムを改修しなければならないという必要性に気付いている事業者がまだまだ少ない実態もあるようです」と前田氏は分析する。

 

 確かに、コストのかかるシステム改修は中小企業の経営者は敬遠しがちで、やるとなってもどうしても後回しにされてしまう。とはいえ、軽減税率対応でいずれは受発注システムの改修が必要になるなら、最大1,000万円の補助金が使えるこの機会をみすみす逃すことはない。

 

 もうひとつのポイントになるのがITベンダーの役割だ。補助金はITベンダーに申請手続きを担ってもらうため、普段から付き合いのあるITベンダーとのコミュニケーションが重要になる。

 

「単発のスポット的な作業となる受発注システムの改修は、ITベンダー側からするとメリットが小さいため積極的に「やりましょう」と声をかけるケースは多くないことが想像されます。また、地方の小売業や卸売業が取引している地場のITベンダーには情報も届きにくいという実態もあり、補助金制度について理解しているITベンダーが少ないことも想定されます。そこで、現在取引しているITベンダーには、小売や卸売事業者側から積極的に相談を持ちかけて前に進めることも必要になります。まずは自社システムが軽減税率制度(複数税率)に対応できるのかITベンダーに確認するところから始めていただきたい。」(前田氏)

 

 軽減税率対策補助金の詳しい内容や申請方法、申請に必要な書類などの情報については事務局のホームページで詳しく解説している。また、事業者の問い合わせに対応するためのコールセンターも設置している。

 

 「補助金申請受付の締め切り間近になると、駆け込みでシステム改修を依頼する事業者が増え、ITベンダー側も人手不足で対応できない事態が生じることが想定されます。直前で慌てないためにも早めに準備を始めてください」と清水氏は呼びかけた。

 

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