ドラッグストア業界のリーディングカンパニーであるマツモトキヨシホールディングスが目指す、流通BMSを基盤とした新たなサプライチェーン戦略とは

2014.6.24

マツモトキヨシホールディングス
執行役員
IT・ロジスティクス統括部長

平松 秀郷 氏

IT・ロジスティクス統括部 MDシステム課
課長代理

安久澤 隆生 氏

記事概要イメージ画像

 ドラッグストア業界で売上高ナンバー1(日経MJ 2012年度日本の専門店調査)のマツモトキヨシホールディングスは基幹システムの更新を機に、2012年から流通BMSへの取り組みを開始。13年1月から仕入額の約60%に相当する取引先と、流通BMSによるデータ交換を開始している。一方でドラッグストア業界全体を見ると、流通BMS導入企業は14年4月現在、マツモトキヨシホールディングスを含めて8社。導入予定を含めても11社に過ぎない。今回は、マツモトキヨシホールディングスにおける流通BMSの導入メリットと、流通BMSを基盤とする新たなサプライチェーン戦略に関する話を聞いた。

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基幹システム(MDシステム)のリプレースを機に流通BMSを導入

 マツモトキヨシホールディングスの前身のマツモトキヨシは、1932年(昭和7年)12月、千葉県松戸市で創業された。その後、都市型ドラッグストアの先駆けとして全国に店舗を拡大。95年にはドラッグストアで売上高日本一に輝いている。2007年10月には「マツモトキヨシホールディングス」を設立。現在は事業会社のマツモトキヨシを中心に小売事業会社13社、小売事業孫会社1社を含む19社、フランチャイズ契約企業13社、業務提携企業4社でグループを構成している。

 

 店舗数は14年3月末時点で45都道府県、1486店を展開。現在の長期経営目標はドラッグストア業界シェア10%獲得、グループ店舗数2000店に向け「顧客理解の深化」「専門性・独自性の確立」「事業規模の拡大」の3つを柱に中長期的な経営戦略を推進中だ。

 

 同社は昨年1月から流通BMSを導入しているが、直接のきっかけとなったのは7年間稼働していた基幹システム(MDシステム)のリプレースだった。平松氏は「今までは個々の取引先様に応じて専用システムを作っていたが、MDシステムの再構築で商品まわりをすべて見直す機会が発生したため、改めて全社共通の流通BMSの導入を検討した」と振り返る。

 

 具体的な導入手順としては、12年7月から全取引先を集めて説明会を実施し、流通BMSへの対応を呼びかけた。安久澤氏は「取引先様の対象は、調剤を除く一般用医薬品、化粧品、日用雑貨品、食品まですべて。既にスーパーやGMSと流通BMSで取引している日用雑貨品、食品関係の卸様・メーカー様からは、以前から早く対応して欲しいとリクエストが届いていたところも多く、反応は良好だった。しかし、EDIになじみの薄い一般用医薬品や、一部の卸様・メーカー様には、機会があるごとに何度も何度も説明会を開催して説明を繰り返すことで、徐々に理解を得ていった」と苦労を明かす。そして一般用医薬品、化粧品、日用雑貨品、食品を中心に流通BMSへの切り替えを順次進め、今年5月時点、仕入高構成で約60%に相当する取引先が流通BMSに対応している。

 安久澤氏

 

ASPサービスを拡充し、ドラッグストア業界全体で流通BMS拡大を促進

 マツモトキヨシホールディングスが流通BMSで交換しているメッセージは、①取引先と発注②出荷③受領④返品⑤支払い――の5つ。同社が流通BMSの導入によって得られたメリットは、通信時間の短縮と、伝票レスの2つが挙げられる。

 

 安久澤氏は「取引先様に発注データを渡す時間が、以前の朝6時から導入後は朝3時と、3時間の前倒しを実現。これにより取引先様は商品のピックアップの開始時間が早まり、物流センターへの着荷の前倒しが可能になった。また、店舗納品の伝票レス化を実現したことで、紙伝票の枚数も大幅削減を実現した」と語る。平松氏は「小売側のメリットより、取引先様のメリットが大きいのが流通BMS。取引先様のビジネスを支援する意味でも、流通BMSを導入する意義が大きいといえる」と強調した。

 

 同社は、今後も継続して未対応の取引先に流通BMSへの切り替えを呼びかけながら、14年度末までに仕入構成で約80%、社数で約200社までの対応を目指す考え。さらに、流通BMSの対応範囲外としていた調剤も含めながら、薬剤師を活用したセルフメディケーションの確立に対応していく。

 

 一方、ドラッグストア業界でも流通BMSの取引先を拡大するために、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)に流通BMS部会を設置。部会が中心となって、同協会が主催するジャパンドラッグストアショーで特設コーナーを設けたりしながら、啓蒙活動を行っている。マツモトキヨシホールディングスでも、流通BMS部会のメンバーとして業界全体への拡大を支援していく構えだ。

 

 「規模の比較的小さな卸様やメーカー様に対しては、BMS部会が中心となってASPサービスを採用している取引先様やITベンダー様を紹介しながら、対応を呼びかけている。今年度は流通BMSを導入して成功した取引先様に直接体験を語ってもらいながら、利用者目線でのメリットを紹介してもらう予定」(平松氏)

 

 また、流通BMSに対応していない中堅、中小のドラッグストアチェーンに対しても、JACDSの流通BMS部会を通して積極的に導入を呼びかけ、業界全体での標準化対応を支援する。

 

「ドラッグストアは、GMSやスーパーマーケットとはレベル感や導入に対する温度が若干異なる。そのため、まずはお互いに勉強する姿勢で、対応していない企業の悩みを聞きながらアドバイスを送っている。特に、地域のドラッグストアチェーンのハードルになるのは、基幹システムを変えないといけなかったり、基幹システムを持たなかったりするところがあること。それらに対しても、企業規模に合わせた対応を得意とするITベンダー様やASPサービスを紹介しながら導入を呼びかけ、流通BMSの底上げを図っていきたい」(平松氏)

 

 流通BMSの標準化については、ECサイトで利用する画像データの一元化や品質管理情報の属性追加が課題となっており、協議会を中心に策定作業が進められている。平松氏は「商品基本情報として画像の属性を統一することで画像管理や画像変換の手間が軽減され、業務の効率化やコスト削減が進む。早く導入してメリットを享受してほしい」と語った。

 

 

オムニチャネル戦略の実現に流通BMSのインフラが貢献

 マツモトキヨシホールディングスが流通BMSを導入し、積極的な活用を目指す背景には、サプライチェーンの最適化に流通BMSが欠かせないと考えているからである。同社では現在、グループの成長戦略として、「オムニチャネル化の推進」「垂直連携体制の構築」を挙げているが、その戦略を実現するベースとなるのが流通BMSなのだ。

 

 また、これまでの課題であったローコストオペレーション体制の確立についても、今年度中にグループ含めて大半の店で「自動発注」を実現し、システムで在庫量を常に把握しながら発注量をコントロールしていく考えだが、流通BMSはそのベースになる。

 

 ローコストオペレーションを実現する上で、さらに欠かせないのが人材の最適配置だ。特に、少子高齢化で地方を中心に人材不足が叫ばれる中、流通BMSは人材の有効活用の面でも切り札になる。

 

「伝票レスによって今までバックオフィスで行っていた伝票作成業務がなくなり、より多くの人材リソースを最も重要な営業や接客業務に割くことが可能になる。バックルームでの仕事を極力減らし、接客やサービスにマンパワーを割くことで顧客満足度の向上につながり、人時生産性の向上が期待できる」(平松氏)

 

 オムニチャネル化の推進については、実店舗、ECサイト、スマートフォン、ソーシャルメディアを組み合わせて、ネットとリアルをシームレスにつなぐオムニチャネル戦略を推進中だ。同社は交流サイト(SNS)の「LINE」の活用を推進。公式アカウントのユーザー数は890万人を突破し、若年層を取り込むことに成功している。ECサイトやSNSのユーザーが拡大する中、ネットとリアル店舗の来店客を結ぶためには、現在チャネルごとにばらばらになっている在庫と顧客情報を一元化する必要がある。

 

 平松氏は「売り場と販促部門が連動し、ビッグデータを活用しながら売り上げを拡大していくには、在庫と顧客情報をどう集約していくかがポイント。その中で流通BMSはO2Oマーケティングを含めて顧客へのアプローチをトータルで行っていくうえで欠かせないインフラになる。当社はネットとリアルをシームレスにつなぎながら、お客様に充実した買い物体験を提供していきたい」と語る。

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